第33章 ポアロにて
私は心の中で密かに溜めていた思いを伝えてみることにした。
絶対に無理だし、困らせたくないからと、伝えてこなかったことをーー…。
わがままでバカだなって思われるのが恥ずかしくて、私は足元の箒の先を見つめた。
「降谷さんといつかー…」
「うん。」
「どこか遠くに旅行に行きたいです。」
「いいな。」
「船に乗ってのんびり一緒に何週間も…。」
「うん。」
無理だということはお互いわかってる。
わかってて2人で想像を膨らませた。
「遊園地…とかではしゃぎたいです。」
「ははっ。」
「降谷さんもカチューシャとか付けて写真もたくさん撮りたいです。」
「カチューシャ……。」
ゼロである彼の写真が残せないことくらい知ってる。
私だって写真には写らないようにしてるくらいだ。
でも、降谷さんの頭にキラキラのカチューシャがあったら楽しそうでしょう?
「他には?」
「…いつか降谷さんとーーー…。」
結婚とかして、降谷を名乗って、『あの夫婦はいつも仲良いな』って警視庁で言われたり、
さらには……
「いつか?なに?」
顔を覗き込まれ、降谷さんに聞かれたが、私はゆっくり首を振った。
「のんびりショッピングとかしてみるのも楽しそうです。」
あまりに将来のことをいうことはできなくて、私は誤魔化すように笑ってそう言った。
「降谷さんは?」
「僕か…。うーん。そうだな。」
降谷さんは一度口を開き、何かを言いかけたが、
そっと閉じ優しく微笑んだ。
「ずっとこれから先もめぐみといたい…。かな。」
本当は何を言おうとしたのかわからないけれど、ゼロという彼の立場上、やっぱり何か言いづらかったのだろう。
私もそれ以上聞こうとはせず、二人微笑みあった。
やっぱり私たちは甘えるのが下手なようだ。