第31章 お手伝い
明日のお手伝いとはポアロのことだった。
マスターさんの知り合いが結婚式の二次会としてポアロを使いたいんだそうだ。
しかし、一緒に働く梓さんが今日の朝左手を捻挫してしまって人手が足りないと、困っているらしい。
「私…で大丈夫なんですか?七瀬に変装は?」
『めぐみのままでいいだろ。一緒に警察事務の夏目と合コンをしたことがあるくらいだから。』
「…七瀬の方がいい気がします。」
『僕が夏目と働きたいんだ。』
まぁ、降谷さんが大丈夫だと言ってるんだからいいのだろう。
『“安室透”は元々警察官の知り合いが多いから別に不自然なことじゃない。』
「わかりました。……お給料でます?」
『警察は副業ダメだろ?ボランティアだ。』
「……。」
『冗談だ。出すよ。』
「もう、本当に最近からかいすぎですよ。」
『めぐみの反応が面白くてな。悪い悪い。』
電話の向こうで笑っている降谷さんに無性に会いたい。
どんな笑顔でいるんだろうか。
ずっと働き詰めで、今も運転中の上司にとてもそんなことは言えないけれどーー…。
「降谷さん…。」
『ん?』
「……いえ。明日何時に行けばいいとかまたメールしておいてください。」
ーー…やっぱり言えない。
家にはハロも待ってるし、ゆっくり休んでほしい。
『会いたくなった?』
「…っ!べ、別に明日会えますから!」
『僕は今無性にめぐみに会いたくなった。』
「会いたい…けど、我慢。私は寝ます。」
ソファの上で膝を立て、電話から聞こえる降谷さんの声に集中した。
『そうだな…。おやすみ、めぐみ。』
「はい。おやすみなさい。降谷さん。」
ーー…おやすみって言われたのは初めてかもしれない。
初恋のようなドキドキを抑え。私は自分の携帯を見つめた。
電話の向こうの降谷さんを想いながら。