第5章 デート
「予約する前に別れてくれたらよかったのに。お料理もったいないじゃないですかね。」
「…君がお店に入っていくのを見てそうじゃないかとおもった。」
「そんな終始見られたら恥ずかしいですよ。」
私がそういうと、降谷さんはむっとした顔になった。
「見てない。偶然だ。僕も料理が勿体無いと思ったんだ。二人分も食べられないだろう。」
「ふふ、そうですね。」
あまりに偶然を繰り返す降谷さんがおかしくてつい笑ってしまったが、怒られると思ってすぐ笑うのをやめた。
「…もったないな。」
料理のことだろうか。
ーーそれとも。
「美味しいですねー。ここワインも有名なんですよ?飲みます?」
「いやいい。この後行くところがある。」
…帰る途中じゃなかったのか。
私はお酒を飲まない上司に気にせず白ワインに口をつけた。
「降谷さんはうまく両立できてるんですか。」
「愚問だ。」
確かに降谷さんなら彼女が何にいてもうまくやっていけそうだ。
「そんな相手はいないが。」
「意外です。」
「君に恋人がいた方が意外だろう。」
「失礼ですね。」
「ふっ。」
鼻で笑う降谷さんにイラッとしつつ、私はグラスを傾けた。
降谷さん相手に会話が盛り上がるわけでもなく、料理を消費だけして、私たちはさっさとレストランの前に来た。
ーー…本当に食べるだけだった…。
「あーあ、彼氏はとうぶんいいやー!」
お店の前で空を見上げながら私がいうと、降谷さんが、スーツを綺麗に直しながらこちらをチラリと見た。
「公安なら両立してみせろ。」
さっき聞いたよ。
自分だって恋人いないって言ったくせに。
もちろんそんなこと上司に言えるはずもないので、じとっと隠れて睨みつけるだけに留めておいた。
「プレゼントも無駄になっちゃった。」
鞄の中の箱を取り出してぼやくと、降谷さんがこちらに手を差し出した。
「?」
「無駄になるならもらってやる。」
「…え。でも。」
彼氏にあげる予定のものとか嫌じゃない?
「食べ物も物も勿体無いだろう。」
「…。ただのペンですけど。」
「ちょうどいい。」
ーー何が?
私は箱を降谷さんの手にゆっくり置いた。