第5章 デート
彼氏とサヨナラをして、お店の前で私はぼーっと立ち尽くした。
レストランは予約してるし、料理だってすでにお店に頼んでる。
それを無駄にするのはなんだか悪い気がして私は一人レストランに入った。
お店の人に一人来れなくなったと伝え、私一人席に着く。
「…はぁ。」
公安になってからは彼だけだが、警察官になってからはフラれるのは何度目だろう。
仕事人間だから仕方ないのかもしれないが、両立がうまく出来なくて自分に腹が立った。
「寂しい思いをさせた私が悪いのかー。」
イタリアンの前菜のフォークを指しポツリと呟くと、目の前の席に見知ったスーツがドサっと座った。
「公安のくせに両立も出来ないのか。」
「ふる……あむ……?」
ここではなんて呼べばいいんだろう。
「席と席が離れてる、誰にも聞こえない。」
「なんで、ここにいるんですか?」
目の前に勝手に座って、彼氏が食べるはずだった前菜を勝手に食べ始めた降谷さんに私は声を抑えながら聞いた。
「…偶然だ。」
「偶然一人でこんなレストランに入ったら私がいたんですか。」
「…偶然店の前を通ったら夏目たちの会話を聞いてしまった。偶然だ。」
偶然だと何度も言い切る降谷さん。
私がフラれたところをバッチリと見ていたのだろう。
「フラれちゃいました。」
「にしてはあまり落ち込んでる様に見えないな。」
「…そう見えますか。」
泣いたって仕方ない。
悲しいというより、虚無感というか虚しさの方が優っていた。
「よく一人で食べようと思ったな。」
前菜のお皿が下げられ、メインの肉料理を食べながら降谷さんが言った。
こんな洒落たレストラン、夜に一人で入る様なお店じゃない。