第5章 デート
午前中に警視庁公安部での仕事を終わらせ、今度は風見班の資料を作るため、執務室に行くと今日は珍しく全員が揃っていた。
降谷さんがずっといるの珍しいー…。
頼まれていた資料を降谷さんに手渡しし、私は席についた。
「ご機嫌だな。」
「ん?そう?」
横の高橋に言われ、私はニコニコと返事をした。
確かに機嫌がいい。
私はこそっと高橋に耳打ちをした。
「今日、久しぶりのデートなの。」
「えっ。お前いたの?」
「失敬な。もう2年になるんだー。お互い忙しくて中々会えなかったんだけど、明日2年の記念日だからね。」
記念のプレゼントの入った鞄を足元に置き、ウキウキとパソコンをいつも以上に軽快にタイピングしていく。
彼氏に公安だとは伝えてはいないが、警視庁に勤めているとは言っている。
忙しい私を理解してくれて、急なキャンセルに怒ったことも文句を言ったこともない優しい彼だ。
彼も彼で仕事人間だから、忙しい時に電話をしたり支えあっている。
「なので、今日は定時に帰りますねー。久しぶりだから楽しみ。」
「久しぶりって?」
「んー、2ヶ月くらい?」
「はぁ?マジかよ。それ絶対浮気されてるやつ。」
「ないない。そんなことする様な人じゃないもん。」
「そう言う奴に限ってするんだって。」
「はいはい。」
私は高橋の言葉を適当に受け流した。
「ごめん。」
「…へ。」
「他に好きな人ができたんだ。」
小洒落たレストランの前で、これからお店に入ろうとした瞬間、隣に立つ彼氏が小さな声でそう言った。
「…好きな…人?でも、電話ではそんなこと。」
「…悪い。寂しくて……つい。」
つい?
ということは、すでにその人と関係を持ってるってことじゃないか。
「…うん。忙しくてごめんね。」
鞄の中の包装紙を見られたくなくて私は鞄をぐっと抱える様に持ち直した。