第25章 銃弾
私は鞄の中からもう一つ取り出すと、降谷さんに差し出した。
「もし食事がまだなら…。」
「助かる。」
降谷さんもお弁当を受け取ると、自分の机で食べ始めた。
「昨日夜あのまま食事とられてないのではと思ったので…。」
「ああ、ちゃんとは食べれてなかった。」
作ってきてよかったと安堵していると、隣にいた高橋がこそっと話しかけてきた。
私は卵焼きを影くんの口に放り込みながら、耳を傾けた。
「夜…降谷さんといたのか?」
「…し、仕事でだよ!」
「あ、そう。」
あと数センチでキスしそうだった事を思い出し、私は必死で赤くなる顔を抑えようした。
ほんっとこういう時だけ感が働く男だ。
私が顔を上げると、黒田さんと目が合い動揺してしまった。
ーー…大丈夫。降谷さんの恋人じゃなかったんだ。勝手に私がそう思っていただけで。
お弁当を作ってきたのだって、降谷さんだけじゃなく影くんにだって作ってきたのだから、彼だけ特別だとか…そういうんじゃない。
心の中で言い訳を必死にしている自分に気が付き私は平常心を取り戻そうとした。
「ハッキング成功しました。」
唐揚げを飲み込んだ影くんが降谷さんにそう言った。
「しかし、相手のセキュリティもかなり高いので、恐らくすぐ気づかれます。…3分以内にハッキング解除しないと…。」
「どこまで見れる。」
「見れるところまで…ギリギリまでやります。バレると犯行現場を移動する可能性もあるので、その前までに解除します。」
「…バレないようにしろ。」
「はい。」
私は弁当を片付け、飲み物を近くに置いておいたが、きっと影くんは飲む暇すらないだろう。
姿勢を正し、タイピングのスピードを上げていく。
執務室は影くんの作業音だけで、誰も何も言わなかった。
「…8箇所も…?くそっ、ダミーか。」
ぶつぶつと呟く影くん。
「…焦らないで。大丈夫。」
「…っ。はい。」
肩を撫でてあげると、影くんの眉間の皺が少し解けた気がした。