第25章 銃弾
「あの……なんのお花だったんですか?」
私が降谷さんを見上げると、降谷さんは少しだけ眉間に皺を寄せプイッと横を向いた。
「別に…。ただ、その辺で拾って枯らすのが勿体無かっただけだ。」
「…それを私の家に持ってきてくださったんですか?」
「………うるさい。」
後頭部に手を回されぐっと引き寄せられた。
降谷さんの胸に鼻からダイブして、鼻が少し痛かった。
私は両手をどこに置いたらいいのかわからなくて、そっと降谷さんの太ももに添えた。
ふわっと降谷さんの家の洗いたての服の匂いがして、少しだけ安心した。
それでも心臓だけはずっと大きな音で鳴っていたのだけれど。
後頭部にあった降谷さんの手がゆっくりと移動して私の耳あたりを撫でていき、私は降谷さんの胸から顔を上げた。
時計の音と、心臓の音だけが聞こえる。
ーー…相手は上司だ。
と、何度も繰り返しているけれど、私を見る降谷さんと目が合うとそんなこと忘れてしまいそうだった。
わんっ!
と、おもちゃを咥えて降谷さんの横で伏せをするハロちゃんに降谷さんは頭をくしゃっと撫で、「今は待て。」と一言あしらうように言った。
つい、くすくすと笑ってしまうと、降谷さんは私の両頬をぐいっと引き寄せた。
「…何がおかしい。」
「す、すみません。」
「キスは恋人としかしない…だろう?めぐみ。」
「…ふるや…さ…」
そっと近づいてくる降谷さんの顔を見ていられなくて、私は目を閉じた。
ぶー ぶー ぶー
何度も鳴り始めるバイブ音。
「…あ、あの。」
「無視だ。」
ぶー ぶー ぶー
「…。」
「くそっ。」
どちらの携帯がわからなくて私達は離れるとお互いが携帯を手にした。
ーー…弟からのスタンプの嵐だった。
早く どこ お腹空いた
のスタンプが色々連続で何度も送られてきていた。
仕事かもしれないと、電話をかけてこないだけマシか…?
「すみません、私でした。でも、弟なので…。」
と、顔を上げると降谷さんは降谷さんで電話がかかってきていたようで、誰かと話をし始めた。