第25章 銃弾
ふと、人の気配がして、ハロちゃんの横で座ったまま顔を上げると、洗面所の方からくくっと笑っている降谷さんがいた。
「い、いらっしゃったんですか?」
しまった。ぼーっと考え事しながら家に入ってきていて、靴とか確認していなかった。
降谷さんはシャワーを浴びたあとなのか、髪の毛がしっとりとしていてTシャツにスウェットというラフな格好をしていた。
「全然ハロがいう事聞かないじゃないか。」
「…こんなにお世話してるのに。」
ドキドキとする。
それは先程影くんに、降谷さんの資料を見たばかりだから。
流石にバレてはいないだろうが、つい先程のことなので緊張していた。
「帰り、遅かったな。」
「少しのんびりとお散歩してました。降谷さんは早かったですね。」
「大したようではなかったからな。」
そうですか…と、私はハロちゃんに視線を戻した。
今度また話をしようと言っていたが…どうするのだろうかとチラッと降谷さんを見ると、降谷さんは私を見つめていた。
私は慌ててハロちゃんに視線を戻した。
またさらに心臓が高鳴り始めた。
近づいてくる足音。
ーー…本当は色々聞きたいのに。
公安のくせに自分のことになるとこんなにも勇気が出ないなんて。
今までの彼氏にはこんなこと…!
「めぐみ。」
あからさまに体をびくつかせてしまった。
「色々、お互い誤解してることが多いように思ってる。」
「…そうでしょうか。」
自分の心臓の音で周りの音が聞こえないほどだった。
じっと、もう少しで食べ終わるハロちゃんの後ろ姿を床に座って見続けていると、私の横に降谷さんもしゃがみ込んだ。
「めぐみ。僕に恋人はいない。」
「…黒田さんを下のお名前で呼んでたので……。」
それに黒田さんも降谷さんのことを“彼”と呼んでいたし。
「めぐみには話していなかったか?僕の上司に同じ苗字の人がいるんだ。」
「…?黒田管理官ですか?」
「そうだ。風見たち僕の直属の部下しか知らないから、これは極秘事項だ。」
「は、はい。」
「だから初めから彼女のことはローラと呼んでいた。それだけ。」
「…私ずっとーー…」
降谷さんとキスした時も、薬のせいとは言え触れ合った時も罪悪感で押しつぶされそうだった。