第24章 裏で
少しだけきゅっと掴んでいた手首に力を入れられて、私は降谷さんを見上げた。
「お気をつけてーー…。」
「あぁ。」
昼間も働き、夜も組織に駆り出される上司。
「ハロちゃんはお任せください。」
私がにこやかにそう言うと、降谷さんも少しだけふわりと笑った。
「もっと仲良くなっておけよ。」
「……ハイ。」
前よりは慣れてはきたが、やっぱり犬は犬。
私のしぶしぶな返事を聞いて、降谷さんは私の頭をポンっと叩くと、銃をホルスターにしまいながら訓練場から出て行った。
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「君のご主人様は忙しいね。」
わふっ。
という返事を聞いて、私は耳の辺りを指先で引っ掻くように撫でた。
苦手でもここまでできる間柄になった。
たぶん、他の犬はまだ無理だけど、ハロちゃんだけ。
潜入やら色々してて、ハロちゃんに会うのは久しぶりだった。
「ご飯の前にお散歩いく?」
わんっ!
元気な返事。
「今日は遊んではあげられないよ。少し歩くだけ。」
尻尾をぶんぶんと振り回しているハロちゃんにリードをかけ、玄関に足の裏を拭くための雑巾を用意した。
「今回は忘れてないぞ。さ、行こうか。」
駆け足で河川敷に向かって走る。
私の横を嬉しそうに駆け、たまに私の顔を見上げてくるハロちゃんに私はなんだか嬉しくて微笑んだ。
「…そう言えば、今日金曜日。」
私が潜入したバーで聞き取った、組織が密会する日。
公安部の捜査員は降谷さんの指示でオリエンタルホテルに行っているのだろうか。
ーー…ちょっと行きたかったな。
降谷さんは今自分が潜入をしながらも、そっちの動向も気にかけていると言うことだろうか。
「やっぱり君のご主人様は凄いね。」
足元のハロちゃんにそういうと、理解しているのか嬉しそうな声でひと鳴きした。
そろそろ帰ろうかと、ハロちゃんのリードを少し引くと、なり始めた私の携帯。
とると、さっきまで話していた人物だった。