第4章 苦手でも
勢いよく食べて飲んで出て行くってのは流石に不自然かと思って
少し時間をかけて私はパソコンの電源を切った。
「お仕事おしまいですか?」
食べ終わったお皿を取りに来た女性店員さんに聞かれ私は首を振った。
「次の仕事の時間なんです。」
「そうなんですね!お疲れ様です。」
ふわふわと笑う女性はきっとここの看板娘さんだろう。
ここに癒されにくる男性もいるに違いない。
パソコンをカバンに入れ、小さな手鏡で口紅が変になってないかこそりと見ると私は伝票を持って立ち上がった。
ーーげ。
レジのところにいるのは安室さんだ。
ちょうど調理してる時に行けばよかった。
伝票を受け皿に置くと、安室さんはにっこりと笑った。
その笑顔はぞくっとするから目を合わさないように財布を取り出した。
「カフェオレ美味しそうに飲んでいただけたようでよかったです。」
話しかけられるとは思ってなかったから驚いた。
私が顔を上げると爽やかな笑顔。
「…美味しかったです。すごく。私の好みピッタリでした。ケーキも。」
「でしたらまた是非いらしてくださいね。」
ーーーどっちだ。
安室っぽく演じるためにそういう風に言ってるけど本心は『絶対仕事以外でくるなよ。』なのか、
素直に『美味しかったんだな、よかったら飲みにおいで』なのか。
ーーわからない。
うちの上司はポーカーフェイスがうますぎてまったく読めません。
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警視庁の自分の席にやっとついてはぁっと一息ついた。
「…変装まぁまぁ上手いな。」
「ん?ウィッグと服装だけだよ。女性は化粧があるからね。」
「その髪型と服装だけならタイプだわ。」
「じゃあ、もうしない。着替えてくる。」
横に座る高橋に言われ、私はズルッとウィッグを外した。
中にまとめていた髪の毛も解き、ちょっとすっきりと肩の荷が降りた気がした。