第22章 言葉でちょうだい
頬に伸ばされた手に戸惑いながら私は降谷さんを見上げた。
「あぁ。ちゃんと評価してる。」
「…ありがとう…ございます。」
にしても、距離が近くないか。
「昨日は…本当にすみませんでした…その…わ、忘れてくださると…助かります。」
「忘れる?」
私の頬から手を離し、後ろの自販機からさっき買ったアップルジュースを取り出した。
「そのつもりはない。」
「…。」
そのアップルジュースを私の手に押し付けた。
「昨日たくさん汗かいたから水分とったほうがいい。」
「〜〜〜っ!!ふ、降谷さんっ!」
なんて事を言うんだと、私は顔を赤らめた。
そんな私をふっと笑い、少し顔覗き込むように近づいてきた。
「ちゃんと聞いただろう?キスしていいかって。それが答えだ。」
「……。」
ん?答え…?
どう言うことだろうかと、アップルジュースを手に私は首を傾げると、降谷さんは眉を寄せた。
「…まさか、わからない?」
「えっ…?何がですか?」
「前に、めぐみが言ったんだろう、恋人でもない人とキスとかはしないと。」
「はい…。そうですね。」
それはそうだろう。普通のことだ。
だからこんなにも罪悪感に苛まれているというのに。
「…まさか……」
「降谷さんっ!」
降谷さんが少し不機嫌な様子で、何かを私に言おうとしたが、廊下の奥から黒田さんの声がして私は慌てて降谷さんから離れて、ペットボトルの小さめのアップルジュースを開けて、飲み始めた。
ど、動揺しすぎて不自然だっただろうか。
降谷さんも自販機でコーヒーを買い始めた。
コツコツとヒールの音を立てながらこちらにくる黒田さん。
チラリと目が合うと思いっきり睨まれていて、私は慌てて目を逸らした。
「じゃあ、めぐみ。昨日の件でFBIのことも少し聞きたいから後でまた。」
「は、はいっ!」
降谷さんは何事も無かったようにそう言うと、コーヒーを飲み干し、黒田さんの方へと戻っていった。