第22章 言葉でちょうだい
自動販売機の前で小さなため息をひとつ。
「…。」
今は苦いコーヒーも甘いコーヒーも気分じゃない。
お金を入れて、指だけが彷徨っていた。
ピッ
後ろから伸ばされた腕。
「いらないなら僕がもらう。」
「…っふ、降谷さん。」
後ろに立っていた降谷さんは、チラッと周りを見渡すと私の耳元に口を近づけてきた。
「…っ!?」
いきなりのことで、ぎゅっと身体を縮こませてしまう。
「身体は平気か。」
「…はっ、へっ!?」
一気に顔が赤くなる。
何を聞いてくるんだーー!?
当たり前に薬は抜けてるし、いつまでも発情してるわけじゃない!
「副作用の話だ。頭痛や吐き気等ないか?」
「あ。」
そっち。
とはいえ、薬を飲んだことは他の捜査員には内緒にしててくれるらしく、こうやってコソッと聞いてくれてるのか。
上司の配慮に、私は何を考えてるんだ…!
「だ、大丈夫です。あの…本当にすみませんでした。」
「…いや。」
それでも上司との距離が近くて私は降谷さんの胸をそっと押しながら、話題を変えようとした。
「音声データは聞き取れましたか?」
「…。あぁ。あれだけ揃えばこちらも撃つ手がある。」
「来週の金曜日でしたか。私たちも行きますか?」
「いや、あとは公安部に任せる。我々は指示を出すだけだ。」
私たちが情報を取り、他の捜査員に残りはさせるのか。
…出来れば私も逮捕したり、最後まで関わりたかったが、それが上司の判断なら仕方ない。
「…行きたかったか?」
つい表情に出てしまっていたようで、降谷さんはふっと笑いながら私の頬を撫でた。
「い、いえっ!」
「大丈夫。君の活躍は裏の管理官には報告している。」
「…裏の?」
降谷さんの上司…だろうか。
ゼロにはまだ上がいるのか。知らなかった。