第22章 言葉でちょうだい
私は気合を入れ直し、いつものスーツに袖を通した。
『サンドイッチ美味しかったです、ありがとうございました。今から本庁に向かいます。』
私も要件だけを伝えて、残りのサンドイッチを食べ終えると、カバンを持って車に乗り込んだ。
薬の件は触れるのすら恥ずかしくて、なんとなく何も伝えなかった。
普通に…
ポーカーフェイスを忘れるな。
仕事はきちんと!
頭で何度も繰り返し、私は警視庁へと向かった。
昼からの出勤という形になったが、みんな夜も仕事があったりするので、誰も何も言わない。
「お疲れ様です。」
普通に執務室にはいると、今日は珍しく結構みんなが揃っていた。
風見さんに高橋に、…黒田さんも。
そして、奥には降谷さん。
私はいつも通り自分の席につき、パソコンを開き昨日の報告書を書いていった。
幹部から聞き取った言葉と、音声データ。
全てを降谷さんのパソコンを送信した。
「降谷さん。今データ送りました。」
「あぁ。」
イヤホンをつけ、データを確認する降谷さん。
お互い何もなかったように仕事をした。
「よっ、昨日潜ったらしいじゃん。」
「ん、うん。」
「その様子だとうまく行ったみたいだな。」
「まぁ。」
髙橋に言われ、私は昨日のことを思い出しながら返事をした。
1週間の練習に、お店への潜入、そして店員とのトラブル。
「なに、歯切れ悪いな。」
「別に。」
ふと、前に座る黒田さんと目が合った。
とたん、心臓が高鳴った。
息ができないくらい汗が吹き出しそうだった。
…ポーカーフェイスだ。
すっと目を逸らし、パソコンの画面見つめる。
急に罪悪感に押しつぶされそうだった。
薬のせいとはいえ、黒田さんを裏切るようなことをしたーー…。
いや、本当に薬のせい?
もし、あの時高橋や他の人でも、降谷さんと同じようにしてた?
薬のせいにして、薬を言い訳にして、わかってて降谷さんとーー…。
私は席を立ち上がった。
「コーヒー…買ってくる。」
「ん?あぁ、いってらっしゃい。」
横の髙橋にポツリと呟き私は足早に執務室を後にした。