第4章 苦手でも
「だって、こんな若くて綺麗な女性がパソコンもって来るなんてカッコいいじゃないですかー。」
「お仕事の邪魔はダメですよ。はい、ガトーショコラです。」
…だめだ、目の前に梓さんという店員さんがいるので今はUSBを渡せない。
机に置かれたガトーショコラを見つめた。
ケーキの横には色とりどりの果物があり、ホイップがツンと角を立て、粉砂糖が上から振りかけられ、チョコシロップでお皿の周りにリボンのようにとろりとかけられていた。
いま、女性店員がここにいたってことは、これ……まさか。
降谷さんがしたの……?
「う、美しいーー…。」
「ふふ、ありがとうございます。ごゆっくりお召し上がりくださいね。」
爽やかに微笑み席から離れる安室さんがキラキラと輝きすぎて私には直視できなかった。
…降谷さんって何者。別人過ぎる。
高橋が執務室の降谷さんしか私は知らないって言ってたけど、まさにその通りだった。
ただ別人格のように振る舞うだけでなく、店員なら店員としてコーヒーを淹れたり、ケーキを綺麗に飾ることだってやってのけるのだ。
フォークでガトーショコラをすくい、口へ。
「…っ!?」
「どうです?」
「わぁ、すっごく美味しいです!私ケーキ大好きで有名なチョコケーキ屋さんとか結構行ってきたんですけど、これは本当に美味しい!」
「ほんとですか!?」
「しっとり具合も上のココアパウダーのほんのりとした苦味も最高です。カフェオレによく合うー。喫茶店の域を超えてますよ。これは通いたい味です。」
「そんなに言ってくださって嬉しいです。じゃあ、ガトーショコラは新メニューとして採用しちゃおうかな。」
「ぜひぜひー、人気メニューになるんじゃないですか?」
女性店員とわいわいと話をしていると、じっとカウンターの中からこちらを見る安室さんと目があった。
女性店員は背中を向けていて、安室さんには気付いていない。
ーーあの、真顔の視線に。
「…っ。おっ…ごほっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「あは、ココアパウダーが喉に…ははー。あ、じゃあ、私仕事しちゃいますねー。」
「あ、ごめんなさい。お邪魔しました。ごゆっくりどうぞ。」
女性店員がくるっとカウンターへと振り返るととたん、安室さんは笑顔に戻った。
ーー…目で殺される。