第4章 苦手でも
私は1番上のチョコケーキに目をやると、カウンターの方にふたたび視線を戻した。
あ、安室さんがいない。
注文時にUSBを渡そうと思ったのだが、もう少しあとに注文をしようとメニューを閉じると、女性店員と目があってしまった。
「何か追加のご注文ですか?」
「…じゃあ、チョコケーキください。」
ここで断って安室さんにまた注文するのは変だろうかと、私はケーキを頼んだ。
「あ、ごめんなさい。今スポンジのチョコケーキがガトーショコラに変更になってるんですけど、かまいませんか?」
「ガトーショコラも大好きです。お願いします。」
「よかったです、すぐお持ちしますね。実はガトーショコラに今日から変更しようかと思ってて、よかったら感想聞かせてください。」
お盆を抱きしめて笑う女性店員はとても可愛いらしい。
「はい、楽しみです。」
私も女性店員に微笑みかけると、先程と同じようにカウンターの奥のバックヤードの方に声をかけた。
「安室さーん、新作のガトーショコラお願いしまーす。」
「はーい。」
すると、女性店員はくるりと私の方を見た。
「ポアロは初めてですか?」
「は、はい。」
話しかけて来るなんてなんてフレンドリーな店員さんだろうかと驚いた。
「今日はお仕事ですか?」
「そうなんです。次の会議まで時間が空いちゃって。」
「へぇ、お客さんバリバリ働いてそうでカッコいいですね!」
「ありがとうございます。ここはカフェオレも美味しいし、店員さんも優しいし落ち着きますね。」
「やだ!お上手ですね!」
顔を赤くして嬉しそうにしてる女性店員の横に、ケーキのお皿を持った安室さんがやってきた。
「梓さんまたお客さんをナンパですか?」