第20章 初めての
『オリエンタルホテル』
『1週間後の金曜日の夜』
『15階』
必要な単語を頭に叩き込んでいく。
彼らは本当に30分ほどの滞在だった。
お酒を飲み、必要なことをだけを話したあと、別々に店を後にした。
残りの30分、ちゃんと演奏を終え、私は一息ついた。
ーーー…あっという間だった。
少し震える手でギターを持ち、控室に向かった。
髪留めを外し、録音を終えるとカバンにしまった。
雑音の中でどれだけ会話を録音できているかわからないが、あとは私が聞き取った会話を報告書に綴ればいい。
「終わったな。相手の方が俺たちの標的だ。あちらの組織はアメリカを拠点にしてるからな。」
「録音データいりますか。」
「いや、いい。」
私はカバンからさっきの水を取り出し一気に飲み干した。
喉がカラカラだ。
「今回はありがとうございました。私はこのまま帰ります。」
「またどこかで。」
「…そうですね。」
顔も名前も知らない人に会うことなんてあるのだろうか。
コートを取り出し、袖を通そうとした瞬間、膝に力が入らなくなってガクンと膝を床についてしまった。
「…っ。」
身体が熱いーー…
「めぐみ?」
「…っ…はっ…」
息がうまくできない。
ふわふわとする頭の中で、私は必死に先程のことを忘れないように男たちの会話を繰り返した。
そうでもしないと、意識が……飛んでしまいそうだった。
「おい、どうした。」
黒井さんが駆け寄り、私の顔を覗き込んだが、うまく話せない。
私は鞄の中のペットボトルを指差した。
口にしたものと言ったらあれくらいだ。
「誰かに渡されたのか?」
「…っ……はぁ…ぁ…」
私は首を振った。
自分で持ってきたものだ。
ここのお店のものは絶対に口にしていない。
「あつ…ぃ……はぁ…くろ…っいさっ…」
私は崩れ落ちないよう黒井さんの袖を縋るように掴んだ。