第20章 初めての
「それでは、明日もよろしくお願いしますね、黒井さん。」
夜2時過ぎ、視察も兼ねた店での演奏を終え、私はギターケースを抱えた。
「あぁ、こちらも何か情報を得たら君に提供しよう。」
「ありがとうございます。」
自分の車に乗り込み、私は携帯を取り出した。
一件の着信。
15分ほど前、降谷さんからだった。
こんな時間だが、15分前ならいいだろうと、私は耳にイヤホンを差し込み、電話をかけた。
『はい』
「夏目です。」
『遅くまでお疲れ。今日は店に行ったのか?』
「はい。明日の夜のために他の演者と練習しておきました。店の内装も把握してます。」
『明日、恐らく幹部1人とその関係者がそこで落ち合う予定だ。そんなに長い時間滞在しないと僕は予想している。顔は覚えたか?』
「もちろん。写真を見て、髪型、メガネ、ヒゲ、何かを変えてきてもいいよう頭に叩き込みました。」
「うむ。しかしあまり気負いすぎず、夏目らしくやればいい。」
「はい。」
『…それと、FBIもその組織に対して捜査しているという情報が入った。当日それらしい捜査官が入り込んでいるかもしれない。が、今回は放置しておけ。邪魔してくるようなら殺せ。』
「…こ、ころっ!?」
『冗談だ。』
降谷さんにしては珍しく物騒だ。
車を走らせながら、私は苦笑した。
『…じゃあ明日。頼んだぞ。めぐみ。』
仕事の真剣な話をしている時に下の名前で呼ばれ、ドキッとしたが、これはきっと明日への任務に対してだろう。
「はい。降谷さんに特訓してもらいましたから。」
『そうだな。それじゃ。』
失礼します、と電話を切り、私はアクセルを踏み込んだ。
明日のたった数時間のために手に豆ができるほど練習してきたんだ。必ず情報を掴んでやる。