第20章 初めての
降谷さんは髪留めを手にとり私を手招きした。
「…?」
言われた通り降谷さんの前に立つと椅子に座らされた。
サラッと髪の毛を持ち上げられた。
「…ふ、降谷さんっ。」
指先が首に触れ私は肩に力が入った。
降谷さんは気にせず髪の毛を丁寧にまとめあげていく。
「当日は他の捜査員は店内には入らない。狭い店だし怪しまれると逃げられる可能性が高くなる。」
「はい。」
「めぐみ一人だ。」
「はい。」
「…任せたぞ。」
「…?」
死んでも成功させてこいって降谷さんなら言うと思ったのに、なんだかいつもと違う気がして、私はそっと後ろを見上げた。
そこにはどこか迷っているような眉を寄せた降谷さんがいた。
こっちを見るな。とでも言うように頭を掴まれ前を向かされるとまた私の髪の毛をサラサラと触り始めた。
「大丈夫です。これでもゼロ直属の部下ですよ。お任せください。」
「…。」
降谷さんはくぃっと私の髪を一つにまとめるとパチンと髪留めを付けた。
降谷さんはこんなこともできるんだなと、感心していると耳の辺りにサラッと柔らかい髪の毛が触れた気がした。一瞬視界に入ってくる金髪と首筋に感じる何か柔らかい感触。
「…っ?」
それは一瞬の出来事で何が起こったのかよくわからなかった。
「普段…誰かが潜入するとなってもこんな気分になることなんて無いのになーー…」
「え?」
耳元で聞こえたかと思ったら降谷さんは両肩にポンっと手を置いた。
「全てをめぐみに託す。」
「…はいっ!」
「警戒心が強いやつらだ、自分から接触するなよ。」
「わかりました。」
私は留められた髪飾りに手を触れた。
「後は店で着る服も用意しておいたから。」
「そんなものまで!ありがとうございます。」
立ち上がり紙袋を除くと黒のドレスが入っていた。
ギターなので、多少足を開かなくてはならない。
ゆとりのある長めのドレスが入っていた。
このドレスを着て二日後には潜入するのだ。
急に自分のすべきことが現実味を帯びてきて緊張してきたが、降谷さんに今までしてきたもらったこと、沖矢さんとの練習を思い出したら冷静になれた。
私は買ってもらった黒い服をぎゅっと握りしめた。