第20章 初めての
沖矢さんは偽名で顔も違って、本当はFBIなんだとカミングアウトされて、頭を整理させるのに家までゆっくりと歩いて帰った。
私に言う必要あったのか?
やはり、彼は降谷さんには黙っていて欲しかったのだろう。
バーで知り合った男性と潜入先で一緒に演奏するつもりですって報告していたかもしれない。
私が公安と分かった時点で先手を打ってきたんだ。
じゃあ、彼の本当の名前はなんなんだろう。
顔も知らない。
「まぁ、次の潜入捜査さえ上手くいけば彼とも関わることはないか。」
私は早速沖矢さんと連絡を取り合い、週末やる曲のリストを受け取った。
あとはこの曲をひたすら練習するだけだ。
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次の日には降谷さんからも曲のリストが送られてきた。
潜入先の店から仕入れた情報だと聞いたが、それももしかしたら沖矢さんによって入れ替えられたものかもしれない。
同じ曲だった。
「急に上手くなってきたな。」
「なんだかコツを掴んできて。」
様子を見に着てくれた降谷さんに言われたが、夜にFBIと共に練習してますとは報告するわけにもいかず、練習の成果だと適当に流しておいた。
「こっちにきてくれ。」
練習をしていたが,降谷さんに呼ばれて私はキッチンの机の方に向かった。
「それは?」
「当日身につけるものだ。」
机に置かれた色々なものに私は目を向けた。
「サイズとか見ておくから一度つけてくれ。」
「はい。」
耳にはめ込むタイプのイヤホンを左耳にぐっと押し入れた。
サイズは問題ないだろう。
「この髪留めが高性能のマイクになっている。が、演奏で会話がかき消される可能性もある。演奏しながらなるべくめぐみが聞き取って記憶しろ。」
「はい。」
そうだ、ただ演奏するだけじゃなく、会話を聞き取らないと行けないんだ。
私はぐっと歯を噛み締めた。