第19章 ねぇ
沖矢さんはアコーディオンを肩にかけ私の横に立った。
「すごい、沖矢さんアコーディオン弾けるんですか?」
「えぇ、昔アメリカでバイトをしていたんですよ。」
「…私は誰かと合わせたことなくて。」
「大丈夫。まずは合わせずいきます。めぐみさんの好きな練習の曲を一人で弾いて緊張を和らげましょう。横で見てますから。」
にっこり笑う沖矢さんにすこし安心して、私は椅子に腰掛けた。
「マスターさん、ありがとうございます。ちょっとお借りしますね。」
まずは冷えてまだ硬い指を慣らすために降谷さんに教えてもらった練習曲を奏でた。
基礎となる曲で、指の練習になる曲。
いつも弾いている曲だからそんなに緊張することなく弾くことができた。
「……。」
横でじっと見ていた沖矢さんが不意にアコーディオンを奏で始めて驚いた。
沖矢さんを見上げると、優しく微笑みながら私に合わせて弾いてくれた。
私も嬉しくて微笑み返すと、音が合わさって自分でも驚くほどいい音が出た。
「…すごい。」
弾き終わると、沖矢さんが私の肩に手を置いた。
「その曲は?」
「これは練習曲として教えてもらったんです。沖矢さんも知ってたんですね!有名なのかな…。」
「誰に…?」
「え…?仕事場の上司です。」
「ほぉー。上司。その上司とは気が合いそうですね。」
「…?」
目をさらに細めて微笑む沖矢さん。
「では今度は簡単かつ有名な曲を僕が弾きますから、めぐみさんは僕に合わせて弾いてみてください。」
「えっ!?」
沖矢さんに合わせてっ!?
「いい練習になると思いますよ。ほら。」
そう言って急にアコーディオンを横に引き始めたので、私は慌ててギターを構えた。