第18章 出会い
降谷さんに教えてもらった奏法は最初に覚えておいた方がいい、指の動きらしく、右手の基礎となる奏法らしい。
「p、i、m、a、ch…」
指を確認しながら延々と同じ動きを繰り返していく。
姿勢に気をつけながら、練習をしているとふわっと香ってくる匂い。
顔を上げると、ネクタイを外した降谷さんが顔を出した。
「めぐみ。ご飯。」
「はいっ!」
じょ、上司が作ったご飯!!
前にポアロで安室さんにケーキを作ってもらったし、降谷さんの家にある調理道具で降谷さんが料理ができることはわかっていたが…!
そわそわしながらキッチンに向かうと、テーブルにはパスタとサラダが並んでいた。
「ひき肉勝手に使ったぞ。」
「わぁ。」
ボロネーゼだ。
すごい!
うちの上司、本当になんでも出来る!
美味しそうな湯気がたつパスタを目の前に私は目を輝かせた。
とたん、お腹がぐぅっと鳴り、私は急いで食べる準備を始めた。
「…そんな嬉しそうにするんだな。」
「えっ?だって誰かにこうやって作ってもらうの何年振りでしょうか。最近は実家に帰っても旅館のバイトの板前くんの賄いとかだったから…本当に小さいころに母に作ってもらった以来かも…。」
「そう。」
「あ、警察学校の食堂のおばちゃんのご飯もそれに入るかもしれません!」
おふくろの味って感じで好きだった。
「確かに。厳しい訓練の後の食堂の食事はうまかったな。」
「ですよね。誰かに作ってもらうってその人の気持ちがこもってる気がして好きです。」
「あぁ。だから、前に作ってもらった食事は美味かったよ。」
二人でダイニングテーブルに腰掛け、降谷さんの作ったボロネーゼを前に降谷さんは私を見た。
「…あの、あの時…帰っちゃってすみません。」
「本当だな。一人で全部食べ切ったんだぞ。」
「ひぇ、ごめんなさい!」
「…美味かった。さ、早く食べて練習再開だ。」
「…はい。」
たくさん作ったの、一人で食べさせてしまった。
それでも、全部食べたって言われて、胸が熱くなった。