第4章 苦手でも
降谷さんは世界で暗躍する、とある組織の内情を知るべく、もう何年も潜入調査をしているらしい。
ーー…それでなんで喫茶店?
私は更衣室で着替えながら風見さんの説明を頭で纏めていた。
『安室透』これが外で使用している彼の偽名だ。
私立探偵で、組織での情報戦のために毛利探偵事務所の一階のポアロに潜入。
組織内でのコードネームはバーボン。
ーー…何個顔あるんだ。
真っ黒のボブのウィッグをつけ、多いな黒縁メガネをかけた。
小さなフリルのついたシャツに、ストライプ模様のパンツスーツ。
ノートパソコンをカバンに入れ、これでもたまに出社する在宅勤務のWebデザイナーの出来上がりだ。
少し赤めの口紅をつけ、執務室に戻ると風見さんには二度見された。
「…誰かと思った。これがデータだ。降谷さんは今その場から離れられない。喫茶店に入って奥のソファに席に座りパソコンを開き、不自然なくUSBを取り出し、注文を聞きにくるか品を届けにきた『安室さん』に渡すように。」
USBを差し出す風見さんに淡々と早口で説明され,それを頭に叩き込んだ。
私はそれを受け取るとカバンの内ポケットにしまった。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈
電車で米花駅に降り、スマホをいじりながらまるで仕事の電話をしている風を装った。
仕事の合間の休憩として、ポアロに立ち寄ったかのように見せるためだ。
上の階あの有名な眠りの小五郎の事務所がある。
不自然の無いよう、怪しまれず行動しなければ。
ゴクリ
目の前にはポアロ。
純喫茶のようで、どこか懐かしい雰囲気が漂う店構えだった。
ジロジロ見ていては変だ。
腕時計で時間を確認。
この中にはあのピシッとした、怖い怖い上司がアルバイターとして潜入しているんだ。
カランカラン
「いらっしゃいませー!」
「すみません、このお店プラグはお借りできますか?パソコンをしたくて…。」
「はい、構いませんよ。あちらのソファの奥の席にどうぞ。」
「ありがとうございます。」
にこっと店員さんに微笑んで私は荷物を抱えなおし、席についた。
ーーー…え。誰。