第16章 上司 降谷零の誤算
「めぐみさんって本当に可愛いっすよねー。」
「知らん。」
風見と影月が話をしているのを報告書に目を通しながら聞いていた。
「知ってます?ちょっと近づくと顔を真っ赤にして困った顔するんすよ。アレがたまらなく好きで。」
ーーわかる。
コーヒーを口に含み、つい心で返事をしてしまった。
これじゃまるで女子高生じゃないか。
「困らせてるぞ。そろそろやめろ。セクハラだぞ。」
ぐさっと風見の言葉が胸に刺さった。
泣くのを我慢して顔をぐしゃぐしゃにして、目に涙を溜めている夏目につい、己の唇を押し当ててしまったのは少し前のことだ。
申し訳ないことをしたと、自分でもわかってる。が、してしまったことを無かった事にするつもりもなかった。
最近夏目に惹かれてることも、これできっと夏目にもバレた。
「でもめぐみさん、好きな人いるんすよねー。」
「そうか。」
興味のなさそうな声で風見は返事をしたが、僕はつい顔を上げチラッと影月に視線を向けてしまった。
あれだけ朝食を一緒に食べたり、頭を撫でたり、また部屋に行くと言ったり、この僕がアピールをした。
夏目も嫌がる様子もなく、僕に触れてくれていたんだ、きっと夏目も僕のことをーー…
「高橋さんと付き合ってるみたいですよ。あーあ、髙橋さんかー。確かにいつも一緒ですもんね。」
「へぇー、あの二人が。」
ーー…高橋?僕じゃなく?
むしろもう付き合ってる…?
ぐしゃっと持っていた報告書にシワがよってしまった。
僕のために弁当を作ってきたのはそう言う意味だと思って…!
「降谷さん?大丈夫ですか?体調が悪そうですが。」
「…っ、平気だ。いやーー…悪いが今日は帰る。」
「はい、お疲れ様でした。」
風見に後は任せ、荷物を片付けて、僕は落ち着かせるため足早に警視庁を後にした。