第16章 上司 降谷零の誤算
第一印象は最悪だった。
風見に用意させた“夏目”という人物についての資料を見て、初めて女性だと知ったのだが、
僕を同じ警視庁公安部の人間だと思って握手を求めてきたのだ。
これに関しては、恐らく勝手に“ゼロ”という人物像を作り上げて、それと僕があまりにかけ離れていたからだろうと思う。
あらかた4.50歳で背が低く、ガタイの良い男性とでも考えていたんだろう。
僕が彼女にゼロだと名乗った時の『えっ』という表情でそう推測できた。
しかし彼女は期待通りの働きをした。
報告書や彼女がまとめた資料だけで、事件のことが頭で想像にたやすかったし、気が回る子だった。
ーー…いい拾い物をした。
たまに出る反抗的な態度や、顰めっ面を抜きにしてもそばに置きたいと思った。
警戒されにくい女性ということもあって、何かあった場合ポアロへの伝達係も彼女に頼む事にした。
ウィッグと眼鏡でだいぶん雰囲気が変わった夏目は、ポアロに入ったとたん、口を開け僕を見た。
“安室”として夏目に会ったのは初めてなので何を考えているのか手に取るようにわかった。
笑顔で接客するたびに、口を開けポカンと僕を見るのだから。
なんために来てるのかわかってるのか。と言いたくなるが、目を輝かせケーキやコーヒーを飲む姿を見ると、呆れて頭を撫でたくなった。犬を見てる気分だ。
しかし、あまりにのんびりケーキを食べているので、急かすために少し睨みつけた。
僕にうまく接触出来るか試しているのにこれでは全然ダメだ。
僕の視線に気付いた夏目が慌てふためいているのを見て、笑いを堪えるのに必死だった。
ーー…面白いやつだ。