第14章 彼氏
その日の夜、私と高橋は駅前の行きつけの飲み屋に来ていた。
「ありがとう、というべきか迷ってる。」
「そこはありがとうだろ。」
「でも付き合ってることになっちゃったじゃん。」
レモンサワーを飲みながら私は焼き鳥に手を伸ばした。
「影月にはそう思わせとけばいいだろ。」
「言いふらされたら…ぞっとする。」
「お前なぁ、困ってるめぐみを助けてやったんだぞ。」
「それに関してはありがとう。前、怒るように冷たく断ったんだけど余計に喜んじゃって…。」
「変態じゃねーか。」
「そうなの、影くん変態なの。」
はぁっとため息をつきながらこれからのことを考えた。
付き合ってるふりしなきゃいけないんだけど、職場だから無理はしなくていいだろう。
それでも、影くんにはそういう目で見られているから気をつけないといけない。
「…めぐみ。」
「んー?」
「あのさ、本当に付き合ってみないか?」
「…ん?」
居酒屋の小さな席で向かい合わせで座っている高橋が、照れくさそうにそう言った。
「最近のめぐみ見てると、なんか…な?」
「…え?」
「俺を恋愛対象にとか、考えたこともなかった?」
「ない。ごめん。」
「まぁ、そうだよな。俺も最近考えたんだ。弁当美味かったし。」
熱い目でじっと見つめられ私は居た堪れなくなって立ち上がった。
「ちょっとお手洗い行ってくる。」
私は席を立ちトイレに向かった。
高橋とは同期で話しやすいし、恋愛対象とは本当に考えたこともなかった。
ーー…ど、どうしよう。
手洗い場の鏡の前でぼぅとしていると、携帯が鳴りはじめたので、トイレから出て廊下で電話を耳にあてた。