第14章 彼氏
今までの歴代彼氏たち…といってもそんなたくさんではないけれど、彼らのことを思い出しながら、高橋と話をしていると、バタバタと足音が聞こえてきた。
もう誰かなんてわかる。
私は身構えた。
「めぐみさんっ。お昼の時間ですよ。一緒に食べません?」
資料室に入ってきた影くんが、満面の笑みを浮かべ棚からひょこっと顔を出した
「ううん、いかないかな。」
「というか、ずっと机にいないと思ったらこんなところでお仕事してたんですね!さすがです!」
ーー…さすが?お前から逃げてるだけだよ。
にっこりと笑って心で悪態をついた。
「めぐみさんの会議資料とか、過去の事例もあるし、容疑者の経歴とかも細かく書かれてるし、本当すごいですもんね。」
「ありがとう。」
私が微笑みかけると、影くんは急に真剣な顔になって私を見つめた。
「…あー!やっぱり、めぐみさんのこと好きです。」
座っていた私に視線を合わせるようにぐっと近づいてきて私と肩を掴んだ。
「うん、でも私は貴方と付き合う気はない。ごめんね。」
はっきりきっぱり影くんの目を見てそう伝えたけど、影くんは私の目から離れようとしない。
「なんでですか…、好きな人でもいるんですか?」
「あ、うん。いる。いるいる。」
諦めてもらおうと私は適当にそう言った。
「僕の知ってる人…ですか?」
なんでお前に言わなきゃいけないんだと思いながら、私はなんて答えようか迷った。
影くんが諦めてくれるくらいすごい人の名前でも言っておこうか。
私の上司の顔がふっと思い浮かんだ。
風見さんや降谷さんくらいの上のすごい人だといえば、影くんも諦めてくれる?
「俺だよ。」
ぐっと肩を引き寄せられ私はパソコンを落としそうになった。
「…っ!?」
「俺とめぐみは最近付き合いはじめたの。な?」
「た、高橋!」
「こんな仕事だし、あまりに身近だから俺が言わないでくれって頼んでたんだ。悪いな影月。」
じとっと影くんが私と高橋を怪しむように見てくる。
「あ、うん。実はそうなんだ。ごめんね影くん。」
「職場恋愛は気を使うしさ、周りにあんまり言わないでくれると助かる。」
肩に回った高橋の意外と大きな手にドギマギしつつ、私も頷いた。