第14章 彼氏
はぁっとため息をつきながら、資料を直していく。
「さっきもらった私の分も直しといてもらえるかしら。」
「はい。」
パサっと私の机に置かれた資料のホッチキスを外していく。
これくらいしてほしかったが、私のミスだから仕方ない。
「私はお昼食べてくるわ。」
「はい。」
コツコツとヒールの音を立てながら、黒田さんは執務室から出て行った。
…苦手な人かもしれない。でも、仕事仲間なのだから、好き嫌いなんてどうでもいい。
好かれようとも思わない。
「…降谷さんあんな人がタイプなのか。」
確かに黒田さんは恋人に尽くしそうな人ではあるし、スタイルいいし、胸はでかかったし、綺麗だった。
「なんでキスしたんだろ。」
それこそ本当に“つい”だったんだろうか。
恋人いるのに最低じゃないか。
車の中で触れるだけのキスをされたことを思い出し、もやもやとし始めた。
顔がいい男はそんなことをしがちなんだろう。
「どうした、ふくれてんぞ。」
電話を終えた高橋がきて、私の頬を指でぷすっと刺してきた。
「なんでもない。ちょっと馬鹿みたいなミスしちゃって直してるの。」
「珍しいな。」
高橋は私にチョコをコロンと渡してくれた。
「…ありがと。」
「ん。」
もらったチョコを口の中で溶かしていると、今度は風見さんが入ってきた。後ろにもう一人いる。
今日から配属になる人だろうかと私は視線向けた。
「今日から風見班に配属になりました、影月(かげつき)です、よろし…く!!めぐみさん!!」
「へっ?」
目まで隠れた長い髪の毛、ひょろっと細長くヘッドホンを首にかけた不思議な男性……
「影くん?」
「わぁ!ほんとにいた!めぐみさん!!」
影月くんはぴょこっと飛び跳ねながら私の右手をぎゅっと握りしめてきた。