第14章 彼氏
無言の時間が過ぎていった。
黒田さんはスマートな動きで、パソコンをしたり色々作業をしていた。
私はついチラチラと黒田さんを見てしまっていた。
ガチャっと開けられたドアから入ってきたのは少し疲れた様子の降谷さんだった。
「あ、お疲れさ…」
「降谷さんっ、お疲れ様です。」
「あぁ、ローラか。今日から復帰だったか。ご苦労だったな。」
私には目もくれず、黒田さんは降谷さんの席の近くに行き、話をしはじめた。
「…。」
“ローラ”。…呼び捨て。
直属になって長いのかもしれないけど、名前で呼ぶだろうか。
黒田さんは降谷さんを“彼”と呼び、
降谷さんは黒田さんを“ローラ”と呼ぶ。
そんなの恋人以外にありえない。
「夏目。」
「は、はいっ!」
「資料見せてくれ。」
「はいっ!」
机に用意していた資料を降谷さんに手渡しした。
降谷さんは資料をめくりながら見ていたが、眉を寄せ私を見た。
「どうした、珍しいな。資料の順番間違えてる。」
ホッチキスを外し、資料を直していく降谷さん。
私としたことが、こんなミスしたことないのに。
私は慌てて他の人にも渡す手元の資料を見て、ため息をついた。
「本当ですね…すみません。」
「いい。後でまた見ておく。」
そう言って、降谷さんは立ち上がり、また出る準備を始めた。
「降谷さん、もう行かれるんですか?」
「あぁ、ポアロの時間だ。あとは頼んだ、ローラ。」
「はい、お気をつけて。」
降谷さんと黒田さんがそんな会話をしているのを私は横で見ていた。
降谷さんが出て行ったのを確認して、黒田さんは私の方にくるりと振り返り、ふふんっと笑った。
ーー…笑われる理由がわからないけど、なんか腹立つ。