第13章 策略
「防衛省の幹部も…降谷さんが?」
先程風見さんが三日前に辞任したと言っていた。
一体どうやって…。
降谷さんはニヤッと笑うと、自分の携帯を私に見せてきた。
そこには動画が映っていて、男性が綺麗な女性の肩をだき、部屋に入っていく様子が映り込んでいた。
「あ。これ…。」
「そうだ。夏目と潜入したあのパーティーに来てたんだ。」
安室さんの浮気調査だけじゃなく、この人の動画もあの時降谷さんは撮っていたんだ。
動画には続きがあって、部屋の中でのアレコレも映っていて、会話も全て聞き取れるほどだった。
「僕の部下も一人潜り込ませてる。これはその動画。」
そして、もう一度見させられたのはSNSの画面だった。
さーっと流れていくコメントは浮気をした防衛省幹部への非難だった。
「引き摺り落とすのは警察じゃない。世間だ。」
悪魔のような表情で降谷さんはニヤリと笑った。
「こういった役所の人間はパートナーを蔑ろにするような行為は世間から叩かれやすい。離婚予定の奥さんからの許可をもらい…すこし痛い目を見てもらうことにした。」
社会的制裁はこの年代の男性に仕事を続けることはできないだろう。
「息子の日頃の行為もヅルヅルと出てくるはずだ。その後の捜査は刑事部の仕事だ。」
僕らはここまで。と、降谷さんはズカズカと私の部屋の奥に歩いて行った。
私も慌てて降谷さんを追いかけた。
「どうやって!小井崎さん殺害の証拠を?」
「ない。」
「へ?」
「しかし、あいつ玄関ではっきりと言っていただろう?“突き落とした”と。」
降谷さんは録画していた携帯を私に見せてきた。
「証拠なんて後からどうにでもなる。とりあえず自供したんだ。」
「…。」
降谷さんは朝食がまだ置いてあるテーブルに座った。
私の向かい側の席に。
私はとりあえず降谷さんに朝淹れたコーヒーをカップに注ぎ差し出した。