第12章 キス
しーっと口元に指を当てると、降谷さんは私から手を離した。
ドキドキする。
あまりにびっくりして心臓が飛び出るかと思った。
『携帯は?』
スマホの画面に打ち出された文字を読み、私はポケットから携帯を取り出した。
そうか、盗聴されてる携帯を私が持ってると自由に話ができないのか。
『呼び出したのは降谷さんですか?』
と、私が携帯に打ち、降谷さんに見せると降谷さんは少し私を睨んだ。
タタっと携帯を打っている降谷さんは急に手を止めるとすごく小さく舌打ちをした。
するとぐっと私に近づき、耳元に口を寄せてきた。
「っ!?」
「面倒だ。」
確かにスマホでいちいち会話をするのは大変だし時間はかかるけれども!
ち、ちかいっ!!
「呼び出した時の声で僕だと分かっただろう。」
「…っ。」
ぽそぽそと盗聴しているスマホが音を拾わないよう耳元で囁かれ、私は後ろに下がろうとしたが、棚があって下がれなかった。
「声…わからなかったです…。事件のことで誰かに呼び出されたのかと。」
私も降谷さんの耳元で話さなくちゃいけなくて、少し背伸びをした。
「…弁当、ありがたかった。」
吐息が耳にかかり私は身体を震わせた。
私は耳が弱点だ。
「…っ。…まだ午前中なのに、もう食べたんですか?」
「あぁ。すぐ食べた。」
「…。」
優しい目で見つめられ私は耐えられず、目を逸らした。
「わざわざ僕のために?」
唇が耳たぶに当たった気がして私は降谷さんのネクタイの辺りを軽く押した。
そして、強く首を振った。
「“つい”です。“つい”作りすぎちゃって、余ったんです。」
“つい”キスをして、なかったことにしようとしてる降谷さんに対して、そういうと降谷さんは少しだけ眉を寄せた。
「…“つい”ね。まぁ、それでも美味かった。ありがとう。」
「……ん…」
鼻から抜ける声が少し漏れてしまい私は誤魔化すように下を見た。
ーー…もう本当に耳は勘弁してして欲しい。