第11章 組織
感情が昂り、涙が溢れそうになるのを必死で抑えながら、私は運転席に座る降谷さんを見た。
「どうして私が再捜査してると気づいたんですか?」
私が聞くと、降谷さんはふっと笑った。
「部下の状況を把握しておくのも上司の仕事だ。」
『私にとっての上司は今もこれからも小井崎さんだけです。』
盗聴されていたあの状況で降谷さんは私に冷たく“手をひけ”と言わざるを得なかったのだ。それなのに私はーー…。
「…すみません。私が掘り返したりしなければ,こんなことにはならなかったのに。」
降谷さんは警察という組織に牙を向こうとしている。
ーー…降谷さんの立場が悪くなったりするのではないのか。
「正義を貫いた人間を死に陥れるのはゼロとしても見逃せない。ましてやそれが公安の仕業なら尚更だ。」
「…公安が?降谷さんどこまで調べてーー」
「話はまた今度だ。梓さんが先にポアロに戻ったらスマホで聞かれてまずい事になる。」
「そうですね、わかりました…。」
数年前の西署管轄のナイトクラブでの殺人事件と、先日起きたナイトクラブの事件との関連。
公安に関係者がいる可能性。
そして防衛省の幹部による圧力。
知りたい事が山ほどある、、
「夏目は小井崎さんから何かをもらったな?」
「はい。事件の資料を最後メールと共に送られてきました。」
「それが欲しい。しかし、パソコンやスマホでは決してデータを開くな。送信ももちろん監視されてる。覚えてることを手書きで書き写せ。」
「わかりました。何度も何度も目にした資料です。完璧にしてみせます。」
「しかしずっとものを書いているのも怪しいからその辺りは上手くやるように。公安部は見られてる。僕の執務室を使え。しばらくは僕の家にも近付かないように。」
「はい。」
「以上だ。向こうは夏目が本当に手を引いたのか監視している。公安部の中、外出中、家の中、全て見られていると思って過ごすように。気付いていることも悟られないように。」