第8章 気になるあの子は
花子 side
「こんにちは~!」
「おや、はなちゃん!おつかいかい?」
「うん!オクラとキャベツと…後、人参くださいな!」
ジルさんのおつかいでいつものお店に顔を出せばおばちゃんが出迎えてくれた。
「はい、いつもありがとうね!これおまけの林檎だよ!」
「わぁっ!いつもありがとう!」
お金を払おうとお財布を出した時、おばちゃんがニヤニヤと意味深な顔で私を見つめる。なんだろう?
「それにしてもはなちゃんもやるわねぇ~!」
「ん?」
私何かしたかな?この間、勝負だと言ってお店のお客さんと飲み比べした事かな?それともジルさんが楽しみにしていたお酒、彼が酔っ払った時についでに貰っちゃった事かな?…色々有り過ぎで分からん…!
「皆まで言わなくても大丈夫!…あんた赤髪の船長さんと良い仲なんだろ?」
「いや、全部言ってるよ?」
おばちゃんはポッと赤く染まった頬をまるで乙女の様に両手で包み身体をくねらせている。
「私とシャンクスさんは何も無いよ?」
「恥ずかしがらなくていいんだよ!最近、町ではこの話題で持ち切りなんだから!」
成る程…だから最近皆私を微笑ましそうな目で見ていたのね。おめでとうやら、良かったねやら…ジルさんに至っては。
ーお前が幸せなら…おらぁ喜んで送り出すぞっ…!ー
その後、おいおい泣いて大変だった…。まったく…何でそんな事になっているのやら。1人盛り上がっているおばちゃんにお金を払い、買った物を受け取ろうとした時、私の後ろからにょきっと逞しい腕が伸びてきた。
「おつかいか?花子。」
「ベックマンさん!」
私の後ろに立っているベックマンさんはいつもの様に煙草を咥え笑みを浮かべる。その腕にはさっき買った物が入った篭が抱えられていた。
「返してください!」
「これをジルさんの店に持っていけばいいのか?」
「聞いてます?!」
篭を奪い返そうと手を伸ばすと彼はその大きな身体を活かし上へ上へと持ち上げる。この人、完全に遊んでる!
「あらあら~!副船長さんもはなちゃんにご執心かい?」
「…そんなところだ。」
「ベックマンさん!」
「あら~!こりゃ今日は島中の娘の泣き声が聞こえるね~!」
きゃーっと黄色い声を上げるおばちゃんをよそにベックマンさんは私の腰に腕を回すと歩き出した。