第35章 決戦の時
花子 side
「ん…。」
心地良い温もりに包まれ微睡みながら私は目を覚ました。ふと顔を上げれば穏やかな表情で眠っているペー君の顔。
「ふふっ…可愛い〜。」
ペー君は自分の口元がコンプレックスみたいだけど私は好きだ。少し尖った歯も私を傷付けない様に気遣ってくれる。
「…何してんだよ。」
「あれ?起こしちゃった?」
少しカサついた薄い唇を指でなぞっていたら擽ったそうに顔を歪めたペー君が目を覚ました。
「…。」
「ふふっ、おはよ〜。」
甘える様に首筋に擦り寄るペー君は猫みたいで可愛いけど、少し擽ったくて身体を捩る私を逃すまいと絡み付く腕に力が籠もる。
「…俺、今なら幸せ過ぎて死ねる。」
「そんな事言ったらうるティちゃん泣いちゃうよ?」
ペー君大好きな彼女だからもし彼が死んじゃったら凄く悲しむだろう。でも、当の本人はこんな時に姉貴の名前を出すなと口をへの字に曲げている。
「…明日、火祭りの日だな。」
「…そう…だね…。」
明日は遂に火祭りの日。錦えもんさん達の長年の悲願を遂げる決戦の日。でも、カン十郎さんがオロチ側の人間であるから彼等の作戦はバレてしまっている。
「花子…お前は…ずっと俺と一緒だよな…?」
縋る様に私を見つめるペー君にぎゅっと胸が苦しくなる。作戦が遂行されない以上、ルフィ君達がこの鬼ヶ島に辿り着くのは難しいかもしれない…。でも…。
「ペー君…私は「言うな。」
「頼むから何も言わず頷いてくれっ…。お前の口から聞いちまったら俺は…お前を壊しちまうかもしれねぇ…!」
私の言葉を遮る様に強く抱き締めるペー君の身体は震えていた…。まるで、現実から目を背ける様に…自分の気持ちを押し殺す様に…。
「お前の事を…愛してんだよ…。」
「っ!」
ごめん…ごめんね…ペー君…。こんなにも私を愛してくれているのに…こんなにも真っ直ぐな想いを与えてくれているのに…。
(でも…私は…。)
ー愛してる…。ー
ーお前を奪おうってんなら、神だろうが魔王だろうが俺が叩っ斬ってやる!ー
ー君の心の拠り所になりたいんだ…。ー
ー俺の仲間になれ!ー
彼等の側を…離れる事が出来ないの…。