第32章 デジャブ?
取り敢えず汚れた身体を綺麗にする為、ページワンは花子を風呂場に連れて行った。自分のマントで花子を包み洗い場にある椅子に座らせそっと彼女の顔を覗き込む。
「後で着替えを持って来させるからお前はゆっくり入ってろ。」
「…。」
本当は側にいてやりたいがあんな事があった後だ。男の自分がいたら怖いだろうと、優しく語り掛け立ち去ろうとするページワンの服の裾を花子はクイッと遠慮がちに引っ張る。
「あの…ぺー君…。一緒に入らない…?」
「えっ…?!」
「1人になると不安で…あっ!嫌なら大丈夫!でも…もし嫌じゃなかったら…側にいて…ほしい…です…。」
予想外の言葉に声が裏返ってしまった。それを否定と取ったのか彼を引き止める手がパッと離される。小さくなっていく声、自分を求める様な花子の瞳にページワンはクラクラと目眩がするのを感じた。
「大丈夫か…?怖くないか…?」
「ぺー君と一緒がいい…。」
自分のマントの合わせ目を胸元でぎゅっと握る姿にページワンは壁に手を付け高鳴る胸をぐっと押さえた。女中に声を掛けて来るからと、一旦風呂場を去りコツリと額を壁に押し当てる。
(何だ…あの可愛い生き物は…?!)
ガンガンと頭を壁に打ち付け悶える彼もまた、重症の様だ。
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女中に着替えを頼み腰にタオルを巻き風呂場に戻ったページワンは何も纏っていない花子の背中にクラリとした。白く細い肩、キュッと引き締まったウエスト。しかし、その背中にある無数の鬱血痕にフツフツと怒りが沸き上がる。
「じゃあ…湯をかけるぞ。」
「…うん。」
蛇口を捻りシャワーのお湯の温度を確認した後、ページワンは彼女の頭にお湯を掛ける。優しく、花子を汚したものを洗い流す様に。
「熱くねぇか?」
「うん…凄く気持ちいい…。」
ふと花子の表情が和らいだ事にホッとした。充分に水分を含んだ花子の髪に泡立てたシャンプーをまぶし綺麗に洗い上げていく。
「人に髪を洗って貰うの気持ちいいよね~。」
「そうか。」
泡を洗い流しトリートメントを終えると、花子の髪は元の美しい黒髪に戻っていた。
(…身体は自分でやれよ。)
(うん!ペー君も頭に洗ったげようか?)
(…俺はいい。)
(?)分かった