第30章 Let's 就活!
花子 side
「ねぇ…さっきの本当?」
「あ?」
「私を奪う人は…皆叩っ斬ってくれるって。」
気だるい余韻に浸りながら私の腰に腕を回しお酒を飲むゾロ君の顔を覗き込む。行為中の言葉等、その場の雰囲気で出たものだと気にも止めないのに…。
「私…ルフィ君が海賊王になったら消えちゃうんだよ。」
「だったらルフィが海賊王になっても、お前が消えねぇ方法を見付けりゃあいいだろ。」
「…もし見付からなかったら?」
私だって自分が消えるのを黙って待っているつもりはない。でも…たまに思ってしまう。もし、方法が見付からなかったら?この運命を変える事が出来なかったらと…。
「んむっ…?!」
「…ごちゃごちゃうるせぇな。」
突然、ゾロ君が私の後頭部を引き寄せ少し乱暴なキスをする。彼の口内からお酒が流れ込み喉がカッと熱くなる。
「もし、お前が消えたとしても見付けりゃあいい話じゃねぇか。」
「…そんな簡単な事じゃ無いんだよ。」
そんなちょっと迷子を探しに行くみたいな言い方するけど、世界が違うんだよ?行き方も分からないし、その前に私の記憶が彼等に残っているかどうかも…。
「俺は、お前の事を忘れねぇ。」
「っ!」
「お前が消えたとしても…例え地獄だろうが別の世界だろうが、必ずお前を見付け出して連れ戻してやる。」
お猪口を置き私の頬を包み込むゾロ君の瞳は私の不安を全て拭い去ってくれる程、力強かった。
「迷子のゾロ君が見付ける頃には私、お婆ちゃんになってるよ。」
「だったら、俺は爺さんだな。」
後、俺は迷子じゃねぇとムッとするゾロ君に思わず彼がお爺ちゃんになった姿を思い浮かべる。
(イケメンって…ズルい…!)
「んじゃ、休憩も終わった事だし…。」
残りのお酒を徳利のまま飲み干しゾロ君は私を押し倒した。
「え…するの?!」
「折角、良い部屋取ったんだ。存分に楽しまねぇとな。」
「だってっ…ンッ、時間っ…!」
ちゅっちゅっと胸に吸い付くゾロ君の肩を押し止めると、彼は私の両手を頭上で纏め上げそれはそれは楽しそうにニヤニヤと笑っていらっしゃる。
「明日の朝まで取ってある。良かったなぁ…時間はたっぷりあるぞ。」
「?!」
そっちの心配じゃないっ!後日、散々ゾロ君に弄ばれ彼に背負われ店を出る私を見たとか、見なかったとか…。