第5章 *作戦 【月島蛍】
「んー、これでもダメか…じゃあ最終手段だな。」
山口君はそう呟いて私の手を引っ張った。
気付いたら私は山口君の腕の中にいた。
「や、山口君!?」
ガタッ!!!
突然後ろの方で音がした。
振り返ってみると、蛍君がものすごい形相で私たちを見ていた。
「優希…!!!」
それだけ呟くと、私の手を引っ張り、強引に連れ去った。
連れてこられたのは視聴覚室。
「け、蛍君…?」
恐る恐る彼の態度を伺う。
「…」
黙ったまま俯いて、何も話してくれない。
無言の時間が気まずい。
時が過ぎるのがとても長く感じる。
この空気が嫌で、沈黙を破ってみる。
「あ、あの…蛍君、怒ってる?」
「怒ってるように見える?なら怒ってるんだろうね。」
無愛想な声で、彼は言った。
「ねえ、なんで僕が怒ってるか…わかる?流石にそこまで馬鹿じゃないよね」
「え、えっと…?」
話の内容が見えない。
「惚けるつもり?僕の前であんなに見せつけてたのに、まさか無自覚なの?」
その言葉ではっとした。
「もしかして…妬いてくれてる?」
「はっ、なんで僕が優希なんかに妬かなきゃいけないわけ?」
うぅ…言われてしまった…。
「…冗談に決まってるでしょ。何しょぼくれてんの。ウザいんだけど。」
「へ?」
「妬いたし。何、僕が妬いちゃだめなの。」
「そ、そんなことない!」
蛍君の言葉に驚きを隠せなかった。