第8章 よそ見ばっかしてんじゃねェ
「すごい!ここがウォーターセブン…!」
目的の島、水の都ウォーターセブンに到着したハートの海賊団は、ヤガラブルに乗り街を散策していた。
コノハと一緒に乗っているのはもちろんロー。
「…おい。珍しいのは分かるがあまり身を乗り出すな。」
ローは、さっきからあちこちを見回す興奮状態のコノハを落ち着かせる事で精一杯だ。
「だってだって!すごい光景なんだもの…!」
複雑に入り乱れる水路は船やブルに乗った観光客や街の人たちで溢れかえっていて、軒を連ねる店はどれも活気に満ちている。
たまに仮面を被った人もいて、まるで街はお祭りムード。
「こんな所来れるなんて幸せだよ!」
とびきりの笑顔で勢いよく後ろを振り向くコノハ。
「フッ、良かったな。」
無邪気に笑われ、こちらまでつられそうになる。
そんな2人を見てたクルー達。
「キャプテンが笑ってる〜。コノハが船に乗ってからよく笑うようになったよなァ。」
微笑ましく言うシャチにペンギンが口を開く。
「ありゃあ、今日激しいな。」
真面目な顔をしているのに、全然真面目なことを言っていないペンギンに呆れるベポ。
「またペンギンはそういう事言うんだから!」
わいわいと好き放題言っている3人を睨んでいると、前に座るコノハの長い髪の毛が顔に当たった。
「…くすぐってェ。」
その言葉に後ろを振り向くと、不快感を顔に表したロー。
「ごめんね?結びたいんだけど、その…。」
何やら言葉に詰まるコノハ。
「キス…マークが見えちゃうから、恥ずかしくて…。」
頸に手を回し少し頬を赤く染めたその姿に、口元を吊り上げるロー。
「…他のヤツらに見せる為に毎日つけてんだ。構わず結べ。」
その一言に余計に顔を赤くしたコノハは、頬を膨らませると無言で顔を前に向ける。
栗毛色の長い髪がブルに揺られふわりと靡く。
髪で隠れる頸には、自分が付けた跡があると思うだけで背中がゾクリとする。
「結ばねェのか。」
「結ばない!」
クツクツと後ろで笑うローに食い気味で答えたコノハの顔は前を向いたまま。
そのまま無言の2人を乗せたブルは中心街へと向かって行った。