第7章 この匂い嫌い?
裸のまま布団の中で抱きしめ合う2人。
「汗掻いて風呂前ってのに、コノハからはいつも石鹸の匂いがするな。」
「この匂い嫌い?」
わざと意地悪く質問をすると隠すように胸に顔を埋めるロー。
「嫌いじゃねェ…。」
埋もれた顔を確認しようと視線を落とすと、そこには耳を赤くしたローがいた。
「ふふっ、そっか。なら良かった。」
小さい手が頭を撫で子ども扱いされているような気分になるが、不思議と悪い気はしない。
グーギュルギュル
幸せなひとときを過ごしていた2人を引き裂くように腹の虫が鳴る。
「フッ、すげェ音だな。」
胸に顔を埋めていたことでお腹の音を近くで聞いていたローが顔を上げる。
「っ…!!ごめん、こんな時に!でも、ローもお腹空いたよね?」
空気の読めない体に恥ずかしさを感じ、なすりつけるように聞くと珍しく人間味のある表情で笑いを堪えるロー。
その姿に胸がドキリと鳴る。
「フッ、そうだな。それよりも先ずは風呂入ってこい。…どうした?」
思わず見惚れていたが、ローの言葉にピクリと体が動きベッドから出ると急いで服を着る。
「えっ、あ、いや!そうだね!じゃっ、行ってくる!」
パジャマなどを手に取ると、腰をさすりながら部屋を出たコノハ。
忙しない彼女にフッと無意識にローの口元が綻ぶ。
服に袖を通し乱れたシーツを綺麗にすると、ソファーに腰掛け近くにあった本を開く。
彼女がいないのに部屋に漂う石鹸の香りに顔を歪ませるロー。
「チッ。」
目線を落とすと匂いに反応した自分のソレが、苦しそうにズボンを膨らませている。
「…クソ。今出したばっかだろうが。」
いつからこんなに彼女を愛おしいと思うようになったのか。
今まで女に見向きもしなかった自分が、今では嘘のようにコノハを必要としている。
他の男に見られたくない、触れられたくない。
許されるならどこにも行かないように縛って自分のそばに置いておきたい。
泣く顔も笑う顔も乱れる姿も、全て自分だけに見せてほしい。
そんな独占欲がコノハと出会ってからぐるぐると頭を巡っている。
「…俺も末期だな。」
ぽつりと呟くと部屋に広がる石鹸の匂いを静かに吸い込んだ。