第5章 また見惚れてんのか
「やっぱコノハのおにぎりはうめェな〜。」
「アイアイ!シャチ!そのおにぎりはボクのだ!」
「ベポが持ってるおにぎり、俺が狙ってたやつぅー!」
船が島を出てから3時間。
頬を撫でる潮風が本当に海の上にいるんだと実感する。
いつのまにか私を船に乗せるとみんなに伝えていたローさん。
当たり前かのように歓迎してくれたみんなのおにぎり争奪戦を見ながらつい顔が綻んでしまう。
そんなコノハを見ながら、無言でおにぎりを食べていたローが口を開く。
「…ところで、コノハの部屋についてだが…。」
「キャプテンの部屋っスよね!?」
突然の言葉にお茶が器官に入り咳き込みそうになるも、なんとか耐えるコノハ。
「…そうだが、なんでそう思う。」
ローの不機嫌な目に、顔を引き攣らせ乾いた笑いをするシャチは、なんとなくっス…と言った。
「…まぁ、いい。俺の部屋は分かっていると思うが、それも含めて船内を案内する。ついて来いコノハ。」
これ以上不機嫌にはしたくないので、少し溢してしまったお茶を拭くと小走りでローさんについて行く。
デッキと同じ階層にある部屋はリビング。
その隣の部屋はキッチンと食堂。
お風呂やトイレ、物置部屋…等々その他も案内してもらい、一つ降りた階層の一番奥の部屋に向かって行くロー。
そこは、前にも一度訪れたことのあるローの部屋。
部屋に入り辺りを見回す。
この前はそれどころじゃなかったので、所狭しと積み上げられた大量の本や、机に置かれた医薬品に目を輝かせるコノハだが、慌てるようにローを見上げた。
「…なんだ。」
「えっ、あの、私ローさんの部屋で生活…するの?物置部屋とかその辺でもいいんだけど…。」
「…不満か。」
そう言うとブンブンと頭を横に振り、少しだけ頬を赤らめるコノハ。
「ふ、不満とかじゃなくて、その…、心臓持つかな…って。」
「安心しろ。もしもお前が心停止でもしたら、俺の能力で治療してやる。」
それはそうなんだけど、そうじゃない。
昨日と今日のキスを思い出すと余計に意識をしてしまうコノハは、デッキに忘れ物をしたと言いローの部屋を出て行ってしまった。
「…クソ。アイツ、俺を殺す気か。」
1人になったローはコノハの発言に顔を赤く染めていた。