第14章 あの人だけのものだから
「じきにその力は解放される…。
力を生かすも殺すも……全て自分次第だ。」
…あぁ、またこの夢だ。
久しぶりに見た気がする。
夢が夢だと気付くまでそう時間は掛からなかった。
「ぐ…ッ…!!」
突如覚えたその違和感に視線を落とせば、その違和感は自分のお腹からだということに気が付いた。
「うっ…!」
顔の見えない人物は目の前に立ったまま。
何もされていないと言うのにお腹の痛みだけは強くなっていく。
夢なら醒めて…
重い瞼を開いたその時、一瞬にして時が止まった。
「っ……!!」
冷たい床に転がる体。
きつく縛られた両の腕。
馬乗りになる男はこちらを見下ろし、顔の近くには2人の男がしゃがんでいた。
「よぉ。お目覚めか?」
自分に跨る男はどこか嬉しそうに手のひらをヒラリと見せた。
間違いない。
この男はあの時背後にいた男。
…私を殴った男だ。
「噂通りなかなかの上玉だなァ!」
「騙すようなことをしてごめんね?」
顔の近くでしゃがんでいる男がサングラスをカチャリと外しこちらに微笑む。
「……!!!」
その笑顔に虫唾が走った。
やっぱり目が見えていたんだ。
「…何が目的なの…!!今すぐこれを外して!」
騙されたとか今はそんなことはどうでもいい。
ジタバタと体を捩るが、この上に乗っている男のせいでうまく動けない。
「健気なこった。この状況で誰が外すかよ!」
クスクスと男達が笑う。
一体何がおかしいと言うのか。
「な、恨むならおたくの船長を恨めよ?」
言葉の意味が分からなかった。
ローは恨まれるような事は何一つしていないはずだ。
「どうしてローが…んっ、ん゛ーーーッ!」
口を塞がれその先の言葉は遮られる。
跨る男を睨むと、興奮しているような血走った目がこちらを見ていた。
「ん゛ーっ!!!ん゛ー!」
ロー以外に見せたことがない場所が、いとも簡単に男達の前に放り出される。
「ん゛ーー!!」
強張る体。
全身の血の気が一気に引いていく。
「うわ、やべぇ!」
「アイツはこんな体を毎日抱いてるのかよ!」
お願い、やめて。
この体はあの人だけのものだから……
悲痛な叫びは誰にも届かない。
ドン、ドンと花火の音が耳に届き、一筋の涙が頬を伝った。