第14章 あの人だけのものだから
強い日差しをじりじりと浴びながら、ローはとある服屋の前に立っていた。
「暑ィ…。」
照りつける太陽のせいで体は汗ばみ、額から垂れた汗は雫となって顎から滴り落ちる。
何度拭えど湧き出る汗に、ローのイライラが募る。
「チッ…」
それでもこの場から動かないのは、店で愛するコノハが買い物中だからだ。
むせ返るような暑さに目を閉じ、壁に背中を預ける。
この暑い気候にもイライラするが、理由はそれだけではない。
ローが何故こんなにも不機嫌なのか。
それは遡ること数時間前ーー
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三ヶ月もの間船で生活をしていた一同は、ようやく見えた島に一喜一憂した。
船を停め、街へと続く門に出向いた時門番である男にこう言われた。
「兄ちゃん達、ここから先は水着になってもらうよ。」
一体何をフザけているのかとローが凄い形相で詰め寄るも、門番は眉一つ動かさなかった。
門番いわくこのマイツリ島では、住民はもちろんロー達のような海賊も、この島に上陸する者は皆水着でなければいけないとのこと。
宿などのプライベート空間は服装は自由だが、公共の場は水着。
それが守れないならこの門は開けることは出来ないと門番は説明した。
コノハを含めたクルー全員は特段気にする様子も無かった。
別にローも自身の格好についてはどうだっていい。
ただ気がかりなのはコノハ。
彼女の露出した肌を野郎共に見せなくてはいけない。
ローはそれが許せないのだ。
コノハは自分だけのモノなのに。
何が楽しくて他人に体を見せなきゃいけないのか。
それでも従わなければこの門は開くことはない。
ローは悩みに悩んだ。
物資の補給なども考えて街へ行くのは決定事項。
コノハと2人で船に残ることも考えたが、新しいクルー達が何か面倒事を起こさないか心配だ。
そしてなにより、毎回島に上陸するのを楽しみにしているコノハが可哀想でならない。
強行突破したとしてもこの人数、この服装ではあまりに目立つ。
よりによってログが溜まるのは一ヶ月後。
一ヶ月もの間潜伏するのは不可能だろう…
(クソ、仕方ねェ…。)
そうしてローは渋々首を縦に振った。