第13章 約束して
翌日になり、島のほとりでは新しく仲間入りしたクルー達が出航の準備をしている。
「だから、違ぇって!その荷物はあっち!」
偉そうに指示をするのは古参であるペンギン。
他の古参2人はそんなペンギンに呆れた目を向けながら、他のクルーに指示を出す。
そして彼らが準備をする傍らローとコノハ2人だけは未だ陸の上にいた。
「お兄ちゃんお姉ちゃん本当にありがとう!」
ロー達の出航をマルコと見に来た少年が2人に笑顔を向ける。
「あぁ。」
「あんまり無理しすぎないでね。お薬もちゃんと飲むんだよ?」
元気になって本当に良かった。
小さな手が少年の頭を撫でる。
「ハハッ、顔が怖いよい。」
怪訝な目つきで少年を見るローにマルコが笑う。
子ども相手にヤキモチを妬く大人。
しかもその大人は海賊団の船長だ。
(…帰ったらエース達に土産話として聞かせてやるよい。)
何やら企んだ笑みを浮かべるマルコにローはため息を吐いた。
そんな2人をよそに、コノハは少年の手を握る。
「お姉ちゃん、何?」
「ふふっ、ちょっとしたおまじない。」
目尻を下げたコノハはゆっくりと瞼を閉じる。
そして自身と同じような境遇の少年に願うのだ。
自分がローという愛する人を見つけたように、いつかこの少年もそんな大切な人と巡り会えるようにと。
強風が吹いているというのに、4人の周りには柔らかい風が吹く。
大きな瞳が開けば、風はたちまち元に戻った。
「へェ、面白い力だよい。」
ローが言ったように、確かになんらかの力があるとマルコは納得した。
「…??よく分からないけど、お姉ちゃんありがとう!」
屈託のない笑顔を向けられ、つられてコノハも微笑む。
「…終わったか。そろそろ行くぞ。」
ローに腕を掴まれ、立ち上がったコノハはマルコに頭を下げる。
「マルコさん、ありがとうございました!またどこかで会ったらー
「あぁ。次会った時は是非ウチの仲間にー
シャンブルズ
聞き覚えのある言葉と共にガラリと景色が変わる。
すぐ側に居たはずのマルコと少年は消え、代わりにクルー達が目の前を慌ただしく横切っていく。
「えっ、マルコさんなんてー
「お前ェら、出航だ。」
「「「アイアイサー!」」」
こうして新生ハートの海賊団は大海原へと旅立って行った。