第12章 まるで魔法だな
ローとコノハが和解した日の夜。
ポーラータング号の食堂ではクリスマスパーティーが開かれていた。
昨夜あえなくコノハに潰されたクルー達は、もう1週間酒は飲まないと各々が誓っていた。
それなのになんて意思の弱い3人なのだろうか。
朝までデッキに転がっていたというのに、再び酒を飲む3人にローは顔を顰めている。
「そういえば3人にプレゼントがあるよ!」
突然声をあげたコノハは目の前に座る3人に満面の笑みを向ける。
「ちょっ、キャプテン!なんで睨むんスか!」
コノハの隣に座るローに鋭い目つきで睨まれたシャチは体を小さく縮こませた。
「ローのもちゃんとあるよ?あとで部屋で渡すね。」
「…あぁ。」
簡単に丸め込まれてしまったローは何も言い返すことが出来ず顔を背ける。
そんなおとなしくなったローを横目にコノハは3人の前にプレゼントを置いた。
「3人とも、メリークリスマス!つまらない物だけど、どうぞ。」
言葉を聞き終えるより先に、目を輝かせながら前に置かれた物を開けるクルー達。
プレゼントを開ける瞬間のワクワクした気持ちは皆平等に与えられているのだ。
「うわ〜!」
「すげェ!カッコいい!」
「ひょ〜!名前入りだ!」
オレンジ色のつなぎを着るベポ。
サングラスをかけるシャチ。
名前入りの帽子を被るペンギン。
もらったばかりの物を早速身に付けた3人は、これでもかというぐらい喜んでいる。
「うんうん、似合ってるよ!」
ここまで反応が良いと自分としても嬉しい。
はしゃぐ3人を見ていると、隣に座るローが突然腰に手を回してきた。
「部屋に戻るぞ。」
自分よりも先にプレゼントを貰った3人に少しご立腹なロー。
掴んだ腰を荒々しく立たせると、喜ぶクルー達を見下ろした。
「今日はテメェらが後片付けをしろ。食べカス一つも残すんじゃねェぞ。」
不機嫌極まりない船長に3人は背筋を伸ばす。
「「「アイアイサー!」」」
あてつけだろうと船長命令は絶対だ。
「みんな、ごめんね!」
片付けなんていつも通り自分がやればいいだけの話。
だが、これ以上ローの機嫌は損ねたくない。
少し可哀想にも見えてしまう3人にコノハは顔の前に両手を合わせた。