第11章 触らないで
ローが全てを話してくれた。
昔、イヴさんと体の関係があったこと。
そして、私の為に2人きりで話していたことも。
それなのに勝手に怒って酷いことをしてしまった。
気付けばいつしか涙は止まり、自分に対して怒りがこみ上げていた。
「ごめん…っ、私、何も知らないでローに酷い事を…。」
横を向けば自分を心配そうな顔で見つめるローと視線がぶつかる。
「…俺がしっかり説明しなかったせいもある。心配させて悪かった。」
長い腕に捕まれば行き着く先は大きな胸。
嗅ぎ慣れた消毒液の匂いに、こみあげていた怒りも自然と治まる。
「本当にごめんなさい。」
何度も謝るコノハにローはため息を吐く。
「もう2度と船から降りるなんて事は考えるな。仮にお前が俺の元から離れたとしても、俺は地獄だろうとお前を追いかけるからな。」
きつく締まる腕の力にローの真剣さが伺える。
ローらしい言葉に顔を綻ばせるコノハだが、後にこの言葉は彼女を大きく支えることになる。
そんな事はつゆ知らず、胸に顔を埋めていると頭の上にあったはずのローの顔がいつのまにか首元に移動していた。
声を掛ける間もなく、気付けば首筋に痺れるような痛みが走る。
「んっ…。」
ローは石鹸の匂いに包まれながら、白い首に所有の証を散りばめていく。
顔を離せばそこには熱のこもった瞳で自分を見つめるコノハ。
完全なる誘いに自制が効きそうにもない。
ローは素早く後頭部に手を回し、薄く開いた唇に喰らいついた。
「んッ…。」
唇が重なった途端入ってきたローの舌はコノハの口内を犯していく。
溶けるような感覚にこのまま身を委ねていたいが、まずはやる事がある。
「ふっ、ろぉ…。」
小さな手が胸を叩く。
名残惜しく唇を離せば、眉尻を下げたコノハが自分を見上げる。
「朝ご飯作らないと。」
肩で息をするコノハにローはため息を吐く。
「必要ねェ。アイツらは誰かのせいで二日酔いだ。」
その言葉にコノハの背筋が伸びる。
すっかり忘れていたが、そういえば昨日全員潰してしまったではないか。
「そうなんだけど、私もお腹空いちゃって…。」
さっきから腹の虫を鳴らし続けるコノハは困り顔でローに笑いかける。
いつも通りの展開に、ローもため息混じりにつられて笑った。