第6章 すれちがい
「…………ただいま」
家に着いたのはお昼頃。土曜日ということもあってお母さんは家にいた。
「おかえりなさい。家に帰ってきたら早織がいなくてびっくりしたよー」
「ごめんねお母さん。急にお泊まり会することになっちゃったの」
「謝らないで。たのしかった?」
「………うん」
お母さんには友達の家に泊まったっていうことにしてある。私はひとつ、嘘をついた。今になって罪悪感が押し寄せてくる。
「雅哉は?」
「ずっと部屋にこもってる。模試が近いから勉強してるんだと思うけど無理してないかな」
部屋にこもりっぱなしってことはわたしが泊まってたことも知らない?
「ちょっと様子みて来てくれない?さすがに心配だから」
「いいよ」
「あとこれも渡してきて。お腹すいてるだろうから」
3つのおにぎりが乗ったお皿を渡された。もしかして何も食べてない?それはさすがにやばい気がする。
「わかった。渡してくるね」
おにぎりを落とさないように慎重に階段を上る。部屋の前についてドアをノックした。それでも返事はなくて、勉強にすごい集中してるんだなってわかった。
「雅哉はいるよー」
一応声をかけて部屋に入る。雅哉は眼鏡をかけて机に向かっている。
雅哉は私に気づいてこちらを振り向いた。
「帰ってたんだ。」