• テキストサイズ

琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第17章 I love you と言わない*




「お帰りなさいませ────静様、透子様」

久しぶりに戻った目黒邸では青木、桜木、美和と三田村が横並びになり家の前に並んでいた。
全員黒の、いつもの従業員服である。

それをみて改めて感慨深い気持ちになりながら「ただいま帰りました」と透子が挨拶を返した。

「分かっているとは思うが。 キミの住まいは今後もここだ。 電車の通っている時間に通勤や帰宅が出来ないことも多いからな」

「はい」

それなら仕方がないのだろう。 透子が頷いた。

「皆もホテルや留守の間はご苦労だった。 俺は出張の準備諸々があるからここで」

そう言った静がまた車のエンジンをかけた。
もう完全に仕事モードの顔だ。

と、青木が素早く前に進み出て静に声をかける。

「静様、それならばリムジンにお乗り換えを」

「………そうだな。 日付が変わるまでには帰るから…そしたら透子、昨晩の続きを」

ふと表情をゆるめた静がやや上気した頬でそう言いかけ、透子の顔を見て口をつぐんだ。

「イッテラッシャイマセ(棒)」

これでも透子は昨晩じゃない今朝だふざけるな、と言いたくなるのを堪えたつもりだ。

「…う、うむ。 では行ってくる」ぐるりとみなを見渡した静が慌ただしくその場を去っていった。

「まあ相変わらず………お茶のひとつでも飲んでから出かけなさればよろしいのに」

「デモ静様ってば、いつもにも増してキラッキラなのデスねえ!」

「ここ最近の静様のご様子からはまるで別人のようですな」

チラと透子の方を見てはうんうんと頷き、ニコニコ顔の面々である。



/ 457ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp