第2章 誰より優しく奪う*
火照っていた体と顔がいっそう熱くなり、チカッと眼前に火花が散る。
「そんっな…したら、ダメ…っ」
「この体で……あともう一つ言うと、俺をこんなにさせておいて、だ」
「ひああっ!!」
ずぷんっと音でもしそうな勢いで太い先端が足の間を押し、シーツから背中を離した。
「ひ…っ」
「そのまま動くな。 辛い思いをしたくないなら………大きく息をしなさい」
得体の知れないものを迎え入れる、それを他人に委ねるという未知に首を左右に振った。
「いっ…や…なんっ、なんで…私を」
「キミが鈍い…いや疎……違うな。 純粋なのは理解した。 その上で俺はこうしてる。 気の迷いならこんなに時間はかけないし、そもそも処女なんかめんど…いや。 俺は…俺を面と向かって叱る女性に初めて会った。 俺はキミをもっと知りたい。 そして出来れば堂々とそう出来る立場になりたい」
静から時おり覗く真摯な内面。
今みたいに、真っ直ぐに見詰めてくる彼を今日、何度か見た。
そしてそんな人に初めて出会った。
「俺の言いたいことは伝わっているか?」
その返事の代わりに目を潤ませ、すうっと息を吸い、深くそれを吐いた。
同時に上半身を倒した静がきつく抱き締めてくる。
「ッ…っ…ぁ…!!」
跳ねそうになる体を押さえ、静がますます繋がってきたのが分かった。
直前でなにか悪いものに侵されそうな気がしていたのに、それは全く違うのだと感じた。
「透子。 大丈夫だから」
声をかけて髪を優しく撫でられ、体から力が抜けていく。
痛むのか気持ちがいいのかは分からない。
ただ温かな体温に包まれ、それとは逆に、内部でゆったりとした律動を繰り返す静は焼けそうに熱かった。
「あっぁあ………あっや…あ」
目を開けても伏せてもぐらぐらと視界が揺れる。
なぜなら目の前にいるのは圧倒的な美しさしかない。
「しっ…静さ……し…」
綺麗なものとは奪う権利を持っている。
景色や造形に見蕩れ、音楽に心を震わす。 それと同じく、五感を通し心が奪われる。
そんなものに抗えるとは思えなかった。
幾度か、頬から伝った涙がシーツを濡らした。
「……ここにいる」
「静…さんっ……」
まるで振り落とされそうに混沌とした思考と感覚の中。 静の体にしがみつき、何度も彼の名前を呼び続けた。