第12章 救いとは
────などという紆余曲折があり、透子が仕事から帰宅する場所は現在、一流ホテルのスイートルームとなっている。
駅ターミナルからの専用バス、専用カウンターでのチェックイン。
連泊ともなると、ホテル従業員人の人たちがこぞって折り目正しく頭を下げてくる。
透子もお返しをし、すると会う人会う人とお辞儀のし合いになるので、なかなか部屋にたどり着けなかった。
そしてカードキーを壁に差すと勝手に電気が着いたりカーテンが開いたりする。
これも何度やってもビクッとしてしまう。
桜木達より、スマホには20時には戻るとの連絡が入っていた。
もうしばらく時間があるらしい。
ここにはシステムキッチンが設置してあるが、冷蔵庫を開けると色々な食材が入っていた。
昨晩やって来た美和が調子に乗って調理人を外注し、パーティーと称して騒いだからだ。
今晩は大人しく自炊で済ませることにし、パスタの皿を運んだ透子がダイニングルームから窓の外をのぞむ。
都心のど真ん中で、高層から眺める夜景は確かに綺麗だが、以前にヘリで見たものには及ばない。
静のことを頭に浮かべると共に、透子は一昨日の夜、ベッドを出て桜木とここで話した事を思い出していた。