第11章 奪い、与え、守る*
考えがまとまらない中で上手く伝えられる自信がなく、それでも透子はつっかえながら自分の気持ちを周囲に正直に話してみた。
「静さんは、尻込みしていた私に誇りをくれました。 迷っていた私に…居場所を与えてくれました。 恋愛に慣れていないのは、私の方も同じです。 静さんを、あ、愛して………いるのだと思います。 せっかく出会えた彼を、私はまだ諦めたくありません」
しばらくの間室内がしんとし、美和がどこか楽しげに言う。
「透子様はドMなのデスねえ!」
「美和さん。 わたくしも抑えたことを口に出してはなりませんわ。 透子様、それでいいのですか?」
「静さんがその気になれば、この場所も突き止められるに違いないと思うんです。 だけどそれをしていない。 多分、ご自分がした事が良くないと、彼も本当は分かっているのだと思います」
もっとちゃんと考えよう。
お互いが前を向いて一緒に歩いていけるように。
透子が薬指にリングのはまった手をそっと片方の手で包む。
「………それならば、わたくしは透子様の側につきます。 それがきっと静様と、ひいては八神のためですから」
どこか吹っ切れたような桜木の口調に、その場の三人の視線が彼女に集まった。