第10章 琥珀色の闇*
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透子の隣に横になった静が仰向けになり、天井を見ていた。
そんな彼にならい、透子も気だるげに静に並んだ。
肌や内部が痛む。
静がこんな風に自らの情欲に任せて自分を抱いたのは初めてだった。
これも男性の欲というものなのだと知ったが不思議と強い嫌悪感はなかった。
意図的にではなく、いつもとは違う余裕のなさのようなものを彼から感じていたからだ。
それについて彼は何も言わなかった。
「こんな後に話す事ではないかもしれないが」と前置いて、静が口を開いた。
「この家には祖父の二人の息子として、正当な後継者がいた。 一人は出来がよく、もう一人は平凡。 だが前者は家を継ぐのを良しとせず、病で早逝した」
寝物語の様に淡々と話す彼の声は心地よく、黙ってそれに聞き入った。
「何としてでも優秀な跡継ぎが欲しかった祖父は考えた。 『いないのなら作ってしまえ』と。 ところが祖父は息子を亡くしたばかりで、そんな気になれなかったらしい」
家族の事をまるで他人事のように語る。 透子はそんな静に違和感を感じ始めた。
「さて、問題は相手だ。 ある者には結婚を諦めさせ、仕事への夢を捨てさせ………結局は金を積んでだな。 何人かの能力の秀いでた女性に、冷凍保存していた死んだ息子の精子を使い、人工受精を試みた」
『俺には親も居ないも同然だ』
いつかの彼の言葉が頭に響く。
「生まれた中で、知能や運動能力が最も高かったのが俺だ。 見た目もかつて祖父が溺愛した祖母に似た。 表向きは祖父が俺の父親となってる。 ここを継いで働かなければ俺の価値はない」
「静………さん」